動的平衡
■以前本夜会で話題に上ったことが手に取ったきっかけのひとつ
生き物や、生命についての知見を随筆として文章にしてくれる福岡伸一さん。
私は福岡先生の文章がとても好きです。
本の始まりは大体、生活の一片が描かれている気がします。
今回のように、仕事の中での同僚からの何気ない一言であったり。
そこには金儲けのような、大学教員ヒエラルキーのような、裏を返せば明日の食い扶持のような。
アカデミックで一見難しそうな単語が目に入ってきても、心地よい文体で描かれている、福岡先生の目を通して見える世界。
高尚さから一歩引いて俗世間を、内側まで生物学的な視点から客観的に見ている。
私は勝手に、現代の鴨長明派だと思っています。笑
今回紹介者さんが印象的だったこと、
「人間の細胞たちは1年間で全部変わるという衝撃」
1年前から自分は全然成長してない…何も変わってない…
と、大人になると特に思いがち。
だけど細胞レベルだとそんなことはありません。笑
ちょっとやそっとではなく、全部変わってます。
生命の不思議なのは、自分であること、生き続けるために、「分裂」「分解」と言った、寧ろ「壊すこと」を続ける、ということ。
勿論形については、生命体のあるべき姿を「再構築」していくので、破壊されて終わりではありません。
今ある自分自身が、壊すことの上に成り立っているというのは、不思議な感覚です。